分散修繕

建物にとって外壁はどのような意味があるのか?

さて、今回は、外壁です。

外壁をあまり話題にしたくない理由は、
外壁は設備ではなく建築業界の領域ですが、
営業宣伝があまりに先行していて、話の仕方が難しいからです。

ちなみに江本が当初、ビルは100年持つからちゃんと手入れをしようと言い始めた
最初の頃は、単なる外壁リフォーム会社かと思われることが多かった。。
「ビル100年を言う=外壁リフォーム」と思われたようで。

▲▽▲外壁は建物躯体ではない

しかし、外壁、は建物躯体ではありません。
外壁は、大切な建物躯体を守る役割(注1)を持つ塗装もしくはタイル等の仕上げです。

建物の、躯体は丈夫ですが、外壁の方は他の建物設備同様に、
40年もするとさすがに劣化する。

▲▽▲外壁に手入れが必要な理由

だから手を入れる必要があるが、
その主目的は、次の2つ。

・躯体の保護機能を回復する事
・外壁・外部設置物落下事故リスクをなくす事
  (看板・造作物を含む)

建物の見た目ももちろん大切ですが、
塗装屋や外壁リフォーム屋やリノベ屋の営業がやたら盛り立てるような
見た目を綺麗にする事では、決してない。

▲▽▲ヨーロッパの建物の見た目が素敵な理由は、意匠

ちなみにヨーロッパの古い建物の外観は綺麗ですが、
あれは機能美です。意匠です。
(意匠は、物品のより美しい外観、使ってより使い心地のよい外観を探求するものです。 )
童話に出てくるおとぎ話の街の建物は、
木のはりで建築技術が低かったから、はりを支える斜めのつっかい棒がたくさんあります。
(石造建築は、貴族の建てる建物だけです。)
地中海の真っ白な家は、暑さ対策です。他の色では夏、熱を吸収して家が暑くなるのです。

意匠は、先進国の要件とされ、
日本の伝統的なもの・建築の意匠デザインの美しさは世界に知られていましたが、
21世紀の日本は、意匠デザイン力(そのマインド)をどうして失くしたのか、
は、世界でも疑問に思われています。

▲▽▲外壁は語るから、仕上げとしての「見た目」は大切

と、またまた脱線しましたが、
建物の見た目も大切です。
人間も年をとると見た目にその人の生き方が現れるように、
「建物の佇まい」は、所有者の建物の持ち方をあからさまに語ってくれてしまいます。

・建物の手入れもできないネグレクトか(精神的な問題を表しますね。。)
・適切な業者に相談できず過少工事が多い弱虫か 
・言われるままに過剰工事するカモか
はたまた、
良い建築士/施工会社と相談して良い仕事をしてもらうことができる所有者か。

をいわずもながで語るのだから、仕上げとしての「見た目」も大切です。
ただし、あくまでも意匠として。目的ではない。

ということで、次回も外壁話の続きです。。

▲▽▲補足:鉄筋コンクリートの劣化とは
鉄筋コンクリートが劣化する、とはどういう事か。

鉄筋コンクリートのコンクリートは、高アルカリ性で、
中の鉄筋の錆を防ぎ、長く強度を保ちます。
ところが、コンクリート表面が、紫外線で劣化する。
寒暖の差でコンクリートが微妙な伸び縮みを繰り返しているうちに、
表面に亀裂が入る。
亀裂が大きくなり、コンクリート内部に空気中の二酸化炭素(CO2)が入るようになると、
コンクリート内部が炭酸化反応して中性化する。
中性化したコンクリートの中の鉄筋まで雨が染み込むようになると、
鉄筋コンクリート内部の鉄筋が、錆で膨張し・・・、後はご想像の通り
鉄筋コンクリートが崩壊。

ちなみに中国等の他国で時々聞くビルの倒壊は、設計が悪く建物強度が足りないため。
日本の建築基準法ではあり得ない。
あれば、それは相当の違法・手抜き・ごまかし建築だから、
本来あるべき鉄筋コンクリート寿命とは別の話。

つまり、巷にはコンクリート寿命60年説が出回っていますが、
(前は40年でしたが、最近築40年超建物が増えて、今は60年らしい。
20年後は80年と言い出す人が増えるのか??)
外壁保護をしっかり行っていれば、鉄筋コンクリートがたったの
60年やそこらで寿命になったりは、
決してありません。

▲▽▲ セミナーのご紹介

引き続き、無料分散修繕セミナーを開催しています。
ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

セミナータイトル:

分散修繕で築50年の壁を乗り越える 

対象: 築30年以上中小ビル・マンション所有者様

内容:
1建物設備インフラ設備の延命更新とは
   外壁の大規模修繕ではない!建物の使用に欠かせない電気・給排水・防水・事故防止に必要なこと
2無理のない30年分散修繕の計画
   無理のない分散修繕計画と資金確保のための築古賃貸マーケティング、費用削減他、建物設備専門業者の選び方
 
講師;株式会社ビルオ 代表取締役 江本真弓

費用:無料

日時;平成30年
11月06日(火) 18:30- 20:30
11月19日(月) 13:30- 15:30
12月05日(水) 15:00- 17:00

場所;渋谷区渋谷1-17-1 TOC第二ビル (部屋番号はお申し込み確認後にご連絡をいたします。)

お申し込み; 当メールに返信もしくは
       お申し込みフォームにて https://form.run/@builo-s

設備工事は事例紹介が難しい

先日の「分散修繕」セミナー第一回目を開催しました。
ご多忙の中ご参加いただきました方には、誠にありがとうございました。
時間配分が悪く恐縮でした。次回は改善します。

ところで、当ニュースレターでは、
建物の最重要基本インフラである電気・給排水周りについて、建物が古くなると何が必要か、の話が続き、
それだけで随分なボリュームでしたが、(単に要領が悪く脱線が多いともいうが・・)
セミナーでは、それを整理すると共に、
バックボーンとなる考え方と全体像の説明にも力を入れています。

▲▽▲ ビル・マンションというものは、

分散修繕の基本の価値観として、

「ビル・マンションは、丈夫な躯体を生かし、建物設備の延命更新を繰り返し、時代に合わせた機能を提供しながら、長く使うもの。」

という世界で一般的な認識があります。

そのために、大資本ではない一般の中小ビル・マンション所有者が無理なく行なっている方法が、

分散修繕

です。

分散修繕という言葉事態は感覚的にわかると思いますが、
多くの日本人にとって、初めての経験となるのが、

「建物設備の延命更新」

です。

▲▽▲ 建物設備の延命更新というものは、

建物設備の延命更新は、通常の修繕とは違います。つまり取り組み方、判断の仕方、相談相手等全てが違います。

また建物設備・・・は建築の一部ではありません。特に建物が古くなると、建築好みの見た目を綺麗にする話ではなく、
建物の使用に欠かせない基本インフラ機能を提供する建物設備に向き合わなければいけない。

こうした区別が付いていなければ、
なかなか事例を真似しようにも、上手くいかないため、
セミナーでは、こうした全体感を持っていただけること目指しています。

もちろん理論だけでは、ふわふわしているので、
事例のご紹介を増やしていきますが、
設備工事の事例紹介は、難しい。。。

▲▽▲ 漏水事故が多発しているビル

先日もとある築50年の飲食店舗が多いビルで最近漏水事故が多いというオーナーに、
ビルは大丈夫だけれど、場合によっては排水管は全交換が必要なのかもしれませんよ。という話をした。

このビルでは今までも言われるままに、部分部分の交換をしているそうだ。
残念ながら菅の下手に継ぎ接ぎすると、
1 「必ず」別の場所から漏水が吹き出す。
2 地震で後からつけた継手が緩み、漏水を起こす。
という相応の経験豊富な配管業者であれば常識、としていることを知らない
水道工事業者が、対処療法を重ねてきたらしい。

漏水問題はわからないことも多く、
解決も簡単ではないのだが、
今までの水道工事業者で根本解決ができていない以上、
もう少し根本解決を考えてくれる専門業者に相談をしなければ、
話が始まらない。

ところがこうした問題対応の難しさに、
実は、そうした対処療法レベル水道工事業者の方が、
長年小まめな対応でオーナーの心と依存心をガッチリ掴んでおり、
同様の漏水問題が形を変えて何度も発生するという根本問題に対して、
自ら対応する意識が育ちにくいことがある。

▲▽▲ 事例をどう見ることができるか

ともあれ、話をすると、
このビルオーナーは次に
「事例を見たい」とおっしゃる。

このオーナーはインターネットをしていないので、
ネットで分譲マンション事例を見ることができない。
事例しかないのだが、

建築系の改装やリフォームと違い、
建物設備工事は、外から見てわかるものが少ない。

給排水管は、最近更新で、パイプスペースが難しく、
建物外につけるケースが増えてきているが、
なぜ、「外につけざるを得なかったのか」
個別の事情と判断理由は、見ただけではわからない。

大型ビルでは、時々ビルオーナー団体向けに見学会を行うところがあるが、
設備管理がバッチリの大型ビルの事例を見ても、
自ビルでどうできるかを想像するのは、難しい。

施工会社であれば、施工事例を解説付きで見せてくれるが、
この方が望むのは、そうした施工会社に相談するかどうか、
の判断材料として、事例を求めている段階だ。

それ以外でどうやって事例を見ることができるかといえば・・・、
私は逆に聞き返してしまいました。

「もし、◯◯さんが排水管交換の工事をして、それで知らないビルオーナーが見せてくれと言われて、
◯◯さんは見せますか?」と。
すると、「テナントのところは無理でしょう。」と即答される。
そうなのです。

またそれでなくとも、設備工事の場合、私の経験でも、
工事が終了した段階では、やったー成功したーとは決して思わない。
工事後しばらくは、問題が出てきませんように・・・、と
工事前よりよほどドキドキして暮らす。
1年2年たっても、まだまだわからないぞ・・という思いがあり、
聞かれれば説明はするが、積極的に披露する気にはなれない。。

VR(バーチャルリアリティ)を組み合わせて、
何をどうしたかが俯瞰できる仕組みを作ることですが、
それは多少時間がかかるので、
まずは、どうにかご紹介の仕方に頭を悩ませています。。

ご提案がある方や、ご自身の事例を見せて構わないと思われる方は、
ぜひ江本にお声がけをください。。。

よろしくお願いいたします。

▲▽▲ セミナーのご紹介

セミナータイトル:

分散修繕で築50年の壁を乗り越える 

対象: 築30年以上中小ビル・マンション所有者様

内容:
1建物設備インフラ設備の延命更新とは
   外壁の大規模修繕ではない!建物の使用に欠かせない電気・給排水・防水・事故防止に必要なこと
2無理のない30年分散修繕の計画
   無理のない分散修繕計画と資金確保のための築古賃貸マーケティング、費用削減他、建物設備専門業者の選び方
 
講師;株式会社ビルオ 代表取締役 江本真弓

費用:無料

日時;平成30年
11月06日(火) 18:30- 20:30
11月19日(月) 13:30- 15:30
12月05日(水) 15:00- 17:00

場所;渋谷区渋谷1-17-1 TOC第二ビル (部屋番号はお申し込み確認後にご連絡をいたします。)

お申し込み; 当メールに返信もしくは
       お申し込みフォームにて https://form.run/@builo-s

今度は免震・制振装置の検査データ偽造問題だそうだ

ビルオの江本です。

ここのところ、KYB社の
地震などによる建物の揺れを抑える免震・制振用オイルダンパー装置の
検査データ改ざん問題が、発覚して騒ぎを引き起こしています。
具体的には、大臣認定仕様と異なる材質のピストン、パッキン、塗料を使用していたという。

免震・制振用オイルダンパー装置は、特に免震の場合躯体下に挿入し、
躯体と一体となり、地震時の揺れを吸収する装置です。
パッキン、塗料はともかく、ピストンが信頼できないとなると、問題です。

しかもこのオイルダンパー装置は、官公庁や病院や観光施設といった、
下手な耐震補強で見た目を悪くしたくないけれど、
人が集まるから耐震対策が必須、かつ公共等予算がふんだんに取れる建物で
好んで使われていましたから、
まあ、問題は軽くありません。

しかし、偽造問題は、度々起こりますね。。。

▲▽▲ 日本の耐震系ビジネスの問題

江本はビル・マンションは100年持つよ、として、
建物設備の延命更新の重要さを強調していますが、
旧耐震基準建築については、
早くから旧耐震基準建物でも、
耐震診断も無理に受ける必要はないと言っています。

それは、震災を甘く見ているのでは決してなく、

理由は、「耐震診断」の「信頼性」が低いからです。

新耐震基準建築物の方も、新耐震基準建だから大丈夫ということはなく、
構造計算の偽造問題も、姉歯事件に代表されるように何度も出ていますが、
そんなのは氷山の一角です。

結局、問題は、大震災対策を、

単なる「恐怖商法」に変える業者がおり、

それをチェックできない建築業界の甘さがある。

「地震対策」と言う葵の紋章を手に入れて、
ちょっと怠けすぎましたね。

「耐震診断」「免震・制振」を言う業者のその言葉の信頼性が、
仕組みとしてどれだけ担保できるか、が
最初から「無い」ので、こうした事件が起こることは想像難くなく、
だから江本は、長い目で見て通用しない
現在の「恐怖商法」ビジネスに、個人が乗る必要はないと考えてきました。

問題は、業者だけではなく、「恐怖商法」に簡単に踊る日本人の甘えもあり、
根深いので、個人レベルでは付き合わないのが一番利口です。

▲▽▲ 自分の個別判断を信じよう

本来あるべきは、
そうした恐怖商法ビジネスに踊るのではなく、
個別判断で、所有ビル・マンションの
建物の形状や見た目の「硬固さ」、立地条件を考慮して、
リスクを判断することです。

とはいえ困ったことに、本来そのアドバイスをもらうべき専門業者の方が、
旧耐震基準=建替、または耐震補強
で凝り固まって、個別判断ができないため、難しいのですが。。。

難しいですが、
自分の所有するビル・マンションを
掛け替えのないオンリーワンの存在として、
個別の判断が最もできるのは、所有者ですから、
そこは、自分の判断を信じましょう。

▲▽▲ 判断力を向上する基礎的な考えを

さて、来週のセミナー準備の
資料を作成していますが、
相変わらず気がつくと細かい説明が増えては、
ボリュームが多くなりすぎるとよくない、と我にかえり
方向修正が続いています。。。

築50年クラス建物に必要な工事例を
紹介すれば良い、と言われればそれまでですが、
やはりビルオは、
それを考えるための基礎となる考えも伝えたいので、
最低でも、簡潔でも、

・修繕と延命更新の違い、
・建築と設備の違い、
・設備寿命の判断の仕方
・設備の重要度/優先順位の考え方
・現在のトレンド
・資金を捻出するための築古経営のポイント

もざっと伝えたい・・と欲を張っています。

ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせ・お申し込みをください。

▲▽▲ セミナーのご紹介

セミナータイトル:

分散修繕で築50年の壁を乗り越える 

サブタイトル;ビル・マンション100年時代に向けて・・・

対象: 築30年以上中小ビル・マンション所有者様

内容:

1建物設備インフラ設備の延命更新とは
   外壁の大規模修繕ではない!建物の使用に欠かせない電気・給排水・防水・事故防止に必要なこと

2無理のない30年分散修繕の計画
   無理のない分散修繕計画と資金確保のための築古賃貸マーケティング、費用削減他、建物設備専門業者の選び方
 
講師;株式会社ビルオ 代表取締役 江本真弓

費用:無料

日時;平成30年
10月23日(火) 15:00- 17:00
11月06日(火) 18:30- 20:30
11月19日(月) 13:30- 15:30

場所;渋谷区渋谷1-17-1 TOC第二ビル (部屋番号はお申し込み確認後にご連絡をいたします。)

お申し込み; 当メールに返信もしくは
       お申し込みフォームにて https://form.run/@builo-s

ビルは丈夫な躯体を生かして設備更新をしながら長く使うもの2

さて、元のお題に戻り、
「鉄筋コンクリート造ビル・マンションは、丈夫な躯体を生かし、
寿命の短い建物設備の延命更新を繰り返し、時代に合わせた機能を提供しながら、
長く使うもの」

という価値観を

1どうして日本は取りれれられなかったのか?
2本来は、誰が日本に紹介すべきだったのか?

どう考えられましたでしょうか?

▲▽▲ 2本来は、誰が日本に紹介すべきだったのか?

先に 2本来は、誰が日本に紹介すべきだったのか?を少し考えて見ると、

●建築士?
建築士は、建築物の設計及び工事監理を行う職業の資格だが、維持管理のプロではない。
もっと言えば、作品を引き渡してしまえば、建築士の責任外、と言えば無責任に聞こえるが、建築士が手出しできる範疇では無い以上、そこに興味を持てという方が酷だ。

●建設会社?
これも同様だが、請負工事で建設した建物を引き渡してしまえば、瑕疵担保や防水保証対応はあるとはいえ、その建物がその後どのように維持管理されるかは、彼らの仕事の外になる。
作った以上メンテナンスも責任持てと言いたいが、それで分譲マンションが12年毎に大掛かりな大規模修繕をした挙句、40年50年でやはり老朽化だの修繕資金が無いだの言っている日本では、その責任は求める方が危険すぎる。

●税理士?国税庁?金融機関?
国税庁は固定資産税の償却期間を決める関係上、もっと欧米のビルを研究しておけ、と言いたいのは山々だが、研究の結果償却期間が長くなれば、それだけ減価償却の旨味がなくなるのが、良いか悪いかの判断は簡単では無い。

●不動産業者
日本の不動産業者は、「不動産の相談は不動産業者へ」と土地も建物も不動産のことは何でも知っている凄い人風を装っているが、宅地建物取引業者は、その名の通り賃貸、売買の媒介ルールを知っている
(ここでは自己を抜いている)だけ。英語では Agency。建物のことは知らない。そもそも不動産業者が千三つ屋と呼ばれた理由の一つが千に3つしか本当の事を言わない。と実しやかに言われた程、???な業界を何でも信じては、

●建物管理会社(プロパティマネージャ)
ビルオーナーで管理会社も経営されている方がここを追求するのはあくまでも管理会社の経営出会って、残念ながら建物管理会社(プロパティマネージャ)は所有者とは違うから、ここも期待できない。
つまり、所有ビルを40年で売却するか100年持ち続けるかは所有者の問題であり、プロパティマネジメントは存在するビルの現在の賃貸と建物管理に、ベストを尽すのみなのだ。
だからプロパティマネジメントの本場欧米で、アセットマネジメントとプロパティマネジメントが別々になっている。

●デベロッパー
デベロッパーは開発と所有の両方を行うから、所有ノウハウを一番持っている。が、大資本の彼らは一般中小ビルに対しては、うちに土地を売って再開発させてくれ、の立場だから、長期所有の協力は期待できない。

●国土交通省役人?大学教授?
望ましくは、でしたが難しいことも理解できる。というのはこうした立場の人間は、とかく観察者の立場だ。
そして日本でも、皆さんがビル・マンション所有を吹聴して回らないように、欧州の所有者も、個人資産の話は、そう簡単に話す話題ではない。自分の資産は自分で守る意識の強いからよりガードが硬い。だから難しい。

とすると他に誰がいるのか?

▲▽▲ 日本で必要としている人

欧米のビル・マンションは長く持つもの、という価値観を、本来は、誰が日本に紹介すべきだったのか、といえば、

●ビル・マンション所有者、ご自身

です。他に誰がいるでしょう。

他は皆、古いビル→建替→新しいビル の方が仕事になる。お金になる。
リスクと負債を背負うのは唯一所有者。リスクと負債以外の
「古いビル・マンションを長く(収益のある状態で)持つ」オプションに直接利益があるのは、
所有者ご自身です。

▲▽▲ 1のどうして日本は取り入れられなかったのか?

そこで1のどうして日本は取り入れられなかったのか? といえば、

まあ、建替えができた高度経済成長期が長く続いたから、そこまで考える前にまず建てろ、だったことはしかがないでしょう。

▲▽▲ 問題はこれからどうしたいか。

過去は過去として、問題は現在。

建替えは、先行き不透明な時代にはリスクが高すぎる。
売却・再開発は負け。自分で取得した土地ならまだしも相続した土地であれば「自分は美田を受け取り子孫には美田を残さない。」負けだ。

それらと長く収益を維持して持ち続ける安定とどちらが良いか。

建替えや売却は、一言いえばすっ飛んで来て手取り足取り手伝ってくれる人はいるが、
所有ビル・マンションを長く(収益のある状態で)持たせる事に関しては、残念ながらそういう人がいない。
所有者の意思と努力が必要だ。

だから能動的に情報を求める。周りの関係者にもそれを要求する。
難しい、と言われれば、それはその人はno ideal程度に捉えて、次に当たる。
をしなければ、全く受け身でビル・マンションの経営を続けられるほど甘くない。ことは欧米を見てもわかる。

日本では築50年以上中小ビル・マンションの維持は、まだ実績の少ない未知のフロンティだから、
フロンティスピリッツを持てば、逆に創意工夫ができて面白いのではないでしょうか。
でも実績ある欧米の失敗しないコツの取り入れは、強くお勧めします。

ビルは丈夫な躯体を生かして設備更新をしながら長く使うもの

ビルオの江本です。

1日未明の台風の影響か、1日に
横浜のビルで、外壁の装飾パネルが落下し、
通行人に直撃、通行人が亡くなる痛ましい事故がありました。
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20181001004959.html
プロ所有のAクラスビルですが、業務上過失致死もあり得るとのこと。
見ると、そう古くはありませんが、
必要以上の装飾は、維持のコストと事故のリスクになるという
最悪の例となりました。

実は、私の家の近くでも、
台風による外壁落下事故がありました。
こちらは被害者はいませんが、築50年クラス雑居ビルで、
ずいぶん前に建物正面エントランス周り1F窓下まで、
大理石の大きなパネルを貼っていたのが、一枚落下です。
落下痕を見ると、元のリシン塗装の上にちゃんと下地処理をしていないようです。

▲▽▲バリューアップ改装の顛末▲▽▲

10年ほど前に、バリューアップ改装と称して、
築古ビルの正面ファザードに何かをつけて見た目を変える手法が流行りましたが、
よほど考えられたものでなければ、
好印象は長く続かない。
このくらいやれば、素晴らしいと思いますが。。。
https://www.archdaily.com/896930/how-to-make-a-facade-with-recycled-materials-16-notable-examples

ペイができるのは、
建物が注目を浴びること=賃料効果
の商業ビルのみです。ただ、
経済合理性が全てでもないので、余裕があれば日本のビルもどんどんやれば良いとは思います。

が、やるならば、同時に
維持のコストと事故のリスクを背負うことに対する自覚も持つ必要がある。

建築士が手を抜くのは、1時の気分か能力不足か、
しかしその後のリスクとコストも、結局所有者が負います。

それで何かあれば被害者ぶって腹が立つと、というのは、

かぼちゃの馬車事件で紹介をした、
・所有不動産の、先の収入および支出について現実的な感覚がない。 ・それより、目先の数字や聞こえの良い言葉に影響されやすい。 ・権威が大丈夫というから、という理由で自分で考えずに決めてしまう
の典型で、やはり所有者落ち度がある。

そこをある程度考えておくのが、ビルオーナーの仕事、です。
(そこが、プロパティマネージャ等とは違う)

ま、バリューアップ改装ブームに惑わされなかった、
ビルオーナーさんなら、なるべくシンプルにして無駄なことにお金を使わないのは、
当たり前では、思われるでしょう。
それが正しいです。

賃貸効果を出す方法は、お金をかけるバリューアップではありませんから、
やれることは他にたくさんありますからね。

▲▽▲ ビルは丈夫な躯体を生かして設備更新をしながら長く使うもの

と前置きが長くなりましたが、
築古ビル・マンションに必要な電気・給排水の延命更新の話を
しばらくダラダラして実例ご紹介を増やす前に、
改めて基本的な「ビル・マンション観」を確認したいと思います。

というのも、

「鉄筋コンクリート造ビル・マンションは、丈夫な躯体を生かし、
寿命の短い建物設備の延命更新を繰り返し、時代に合わせた機能を提供しながら、
長く使うもの」

が世界の常識です。
ここで世界とは、欧米だけではなく、カナダ・オーストラリアも含む程度でもなく、
中国をはじめとするアジア各国、中東、アフリカ、中南米も全て含んだ世界です。

に対して、日本だけが、
ビル・マンションを築40年築60年で寿命と言います。

日本は明治時代に西洋建築技術を輸入し、戦後高度経済成長期あたりまでは協調していたはずですがね。。
どうして違うのでしょうか。

そこで質問です。

技術とは異なる「ビル・マンション観」について、

1どうして日本は取りれれられなかったのでしょうか?

2本来は、誰が日本に紹介すべきだったでしょうか?

当事者として、真剣に考えてみてください。

築40年を過ぎたビル・マンションのリクス

築40年を過ぎたビル・マンションは、以下のリスクが高まります。

電気; 漏電による停電や漏電火災のリスク

給排水; 排水管の漏水、水の水質の劣化、ほかにも屋上・外壁からの雨漏りのリスク

生命の安全; 外壁落下、看板落下、天井落下、火災時に消防設備や避難設備が機能しない等あらゆる事故リスク

自分だけが使用している自宅なら、多少の我慢はできますけれどね。賃料をいただいているテナントにあまり迷惑をかけることは、好ましくないでしょう。
そこで、それぞれの建物設備分野別に、もう少し詳しく見ていきます。

  • 電気
  • 給排水
  • エレベータ
  • その他事故対策

分散修繕計画は従来の修繕計画とは違います

分散修繕の計画をお勧めするにあたり、一つ強調をしておきたいのが、分散修繕計画と従来の修繕計画は違うということです。

だから、昔作った大規模修繕計画があるから大丈夫、だとか分散修繕のために、大規模修繕計画を作ってもらおう、というのは残念ながら違います。

何が違うかといえば、
従来の修繕計画は、現在の建物設備一覧に対して、修繕または更新が必要とされる時期にその費用目安を見積もっています。
そのため、金額が

  • 全て更新の積算になっている
  • ソリューションの違いが反映されていない

それで一見良さそうですが、実は実用的なことは何もわからないのですね。例えば、

1 延命更新のためのソリューションは、1つではなく沢山あり、予算もピンキリだが、どの程度かわからない。

2 40年前の建物設備が老朽化してリニューアルが必要として、そこで単純に同じ物を交換すれば良いかというと、そうとは限らない。当時と現在とでは、技術性能が違う。建物の使われ方も違うえば、そこで要求される機能性能も違う。そもそも必要なくなることもあれば、別のソリューションに組み込まれるかもしれない。そうした現実が、全く反映されない。

3 当時は想定になかった新しい設備機能が必要になっていても、それは含まれていない。

4 テナント専有部は、テナント退去のタイミングでしか工事ができない等の制限が、反映されない。

つまり、時代による変化や、予算の都合、テナントの都合が、全く反映されておらず、実用的ではないのです。

だいたい修繕計画の通りに修繕しています。という人は、いますでしょうか?

分散修繕計画は、逆に実用のための計画です。

資金計画で大まかな資金枠を確保し、その中で何が必要か、何が出来るのか、テナント都合等も考慮して、考えます。

分散修繕計画と従来の修繕計画は違いは、

従来修繕計画は、現在の建物設備ありきの、修繕のご提案です。

分散修繕計画は、自分の資金都合ありきの、自分のための延命更新工事計画なのです。だから、分散修繕計画は、自分で作成します。

ビル・マンションの分散修繕は計画的に行いましょう

ビル・マンションの分散修繕は計画的に行いましょう。

分散修繕は、計画的に取り組むことができます。 そこが緊急修繕とは違うところです。

計画的に取り組むメリットは、

  • 計画的に資金準備ができる
  •      

  • 検討の時間を十分にかけることができる
  • それぞれの設備を使えるだけ長く使い倒す、というのは理想ですが、設備は1つではないので、
    劣化が時期が集中すると、その時期の延命更新資金確保が難しい。
    その上どうしようもなくなってから急いで決めると、どうすべきか十分な検討の時間が取れず、無駄や失敗のリスクが高まります。

    築年を重ねた中小ビル・マンションにとって、1番の敵は修繕が必要なのに修繕資金がない!状況です。

    そうならないために、実際に建物設備の老朽化問題深刻化が集中するのは、築40年をすぎて築50年前後ですが、築30年をすぎたあたりで取り組み始めることをお勧めします。

    建物設備は一度に全部更新する必要はないです

    日本では、古い老朽化建物をどうにかするというと、
    大規模修繕やリノベーションといった、一度に問題を解決しようと考えられがちですが、それでは高額すぎて、修繕積立金制度のない中小ビル・マンションでは、なかなか取り組めません。

    建物設備は、電気、給排水、空調・・・・の集合体です。

    それぞれ、老朽化時期は違います。モノとしても違う上、個体差もあります。だから一度に全て修繕する必要は、全くありません。それぞれ必要なタイミングで必要な箇所だけ延命更新をすれば十分ではないですか。

    そうすることで、ひどく老朽化した部分がないため、長期的にも、建物全体で老朽化もしないのです。