1. 電気幹線・設備

綺麗な水を供給しよう。赤水漏水も注意。

前回、綺麗な水の供給の話のために必要なこと。
前回の屋上給水タンクの廃止以外の残り、赤水と給水管漏水がある場合について。

正直、水の問題は、ビルとマンションで大きく違う。
マンションは確実に問題が出るが、ビルはケースバイケースでしょう。

実際、私がアセットマネージャ時代に気がついた秘密の一つが、
従業員が男性ばかりのビルは、建物全体での水の使用量が極端に少ない!
トイレで水を流す数も少なく、給湯室など使わないでしょう。
もちろん築50年でも水のトラブルはゼロ。
しかしこればかりは、仕方がない。。。

▲▽▲赤水問題▲▽▲
常時でなくても、時々朝一番だけ、であっても、
テナントに赤水の苦情を言われると辛い。。。

問題が赤水だけであれば、赤錆除去装置が使える。例えば、
http://www.biowater.co.jp
これは、水質を変えて赤錆を黒錆にして、錆の原因箇所を塞ぐという。

装置を導入する場合の留意点は、
その後他の問題で給水管を交換する可能性の確認程度だろう。
もし他の理由で給水管を交換することになれば、
せっかく設置した装置が無駄になる。そこは気をつけたい。
予定はなくとも、
例えばこれから直結増圧式への変更を行う場合で、
古い菅野増圧後の耐性不安を指摘されて、給水管もついでに交換するケース等が該当する。
または一棟リノベーションをやるだとか。

▲▽▲給水管の漏水▲▽▲
こちらも嫌なトラブルの上位でしょう。
給水管縦菅の漏水をご経験されてる方いらっしゃいますか?
勢いよく水が吹き出すのを見るのは、心臓に悪い。。

最近は協力な防水テープで水を止めることは、できる。
https://odditymall.com/flex-tape
このFLEX Tapeは日本でも購入可能。
https://amzn.to/2xEka9G

が、漏水問題は、とかく一箇所を塞ぐと別のところから水がでる傾向があるので、
永遠に漏水といたちごっこを続けるのは、考えるに心臓に悪い。
建物を長く持つならば、どこかで腹をくくって、
テープで一時的に漏水を止めて時間稼ぎをしながらでも
資金を準備し、更新するしか根本解決が今のところない。
(3Dプリンタが使えるようになれ新しい方策が出てくるかもしれないが。。)

▲▽▲理屈はわかるが難しい▲▽▲

とはいえここまでで、
更新更新と簡単にいうな・・が感想でしょう。
パイプスペースが狭く変形で、新しい管を入れるのは無理、
もしくはアクセスがテナント専有部からしかない、
テナント専有部にかかるところに問題がある、
・・・

実際、建物設備延命更新ソリューションの難しさは、
一棟一棟異なる条件を、頭を使って個別対応が必要なところにある。

それでも悪くない事例は、今後ご紹介をしていきたい。

電気容量不足なら・・・フランスのフラットで家電が突然止まった話

前回電気容量の話を書いたところで、以前にフランスで経験した「驚く」電気容量不足解決策を思い出してしまいました。これをご紹介したいと思います。。

▲▽▲洗濯機と食器洗い機が止まった▲▽▲

それはフランス人の友人宅に滞在していた時だった。

朝ゆっくりと起きて朝食を食べてようやく動き出した11時ごろ、洗濯機と食器洗い機が、両方止まった。 部屋のブレーカーは落ちていない。友人もわからない。 しばらくあたふたあちこち確認をしたがわからない。

とうとう友人が管理会社に問い合わせた。ら、

そのフラットでは、平日朝の11時から13時 は建物の清掃担当者が掃除や修理をするから、その間部屋の電気の一部を止めるのだとか。 なんだ、とあっさり言う友人。 建物の電気容量が足りず、過去にトラブルがあったのかもしれないが、 テナントの権利が強い日本では考えにくいその大胆?な発想!、 それを説明していなかった不動産屋!、 そこでアッサリ納得して怒らない友人の態度!、 当時は私はただただ????????で、日本ではあり得ない話、と思っていた。

 

▲▽▲テナントの損得は▲▽▲

が、今なら、最近の日本なら、あり得る。
もちろん日本では、

  • 入居前に不動産屋が説明をしていること、
  • それでも構わないと思える賃料の安さなり何かのメリットがあること

要はテナントが「騙された!損させられた!」と思わず、逆に「得した」と思えれば良いのです。

ちなみに上の例のフランス人の友人は、今まで平日昼間は仕事で部屋にいなかったから気がつかなかったそう。もともと賃料にお得感があったのかもしれない。。

 

▲▽▲バリューダウン▲▽▲

さて、このお話をご紹介した理由は2つあります。
まず1つは、これが、バリューダウンの事例ということ。

従来のリフォーム業者やら盛んに盛り上げたバリューアップ策(改装や何かをすれば賃料が上がる)が簡単にできると期待する人は、今やいないと思いますが、
安易に賃料が上がらな時代の築古ビル・マンションにとって、バリューダウンこそサバイバルの秘訣です。
つまり、多少賃料を下げてでも、「費用対効果が確かでない投資をしない」という引き算の発想です。

もちろん、
自ビル・自マンションの強み、選ばれるポイントを潰さないこと、が大前提であるのはいうまでもありませんが。

 

▽▲分散修繕で活用できるバリューダウン▲▽▲

もう1つの理由は、これが、分散修繕の事例にもなること。

建物全体の電気容量が足りない。しかし予算その他の事情から直ぐに電気幹線交換の工事はできない。場合、

建物としていずれ交換するとして、交換するまでの間の「繋ぎ」策として、バリューダウン
は、現実的な方策です。

目先だけ見るとバリューダウンは、建物ランクが下がったように見えるが、長期的な分散修繕のための一時的な「繋ぎ」を入れることで、建物は長く生きまた価値を上げることができる。

そうして、とにかく建物を長く持ち続けることが大切です。

電気幹線・設備の交換2

▲▽▲電気幹線の工事は面倒▲▽▲

設備はともかく電気幹線の交換が必要と言われても、電気の線は全て天井裏、壁の後ろ、床下、スラブ貫通の場合もある。

面倒くさい話になりそうだと直感して、せいぜい次の内装工事の機会にでも、と思うのはごく普通の感覚です。。

実際それでも構わない。(遅すぎなければ。)構わない時間の余裕を持つためにも、早めの分散修繕計画をお勧めしている。

とはいえ、電気業者に相談をすると、断線調査をして、断線箇所がないから大丈夫という可能性が高い。

ここに、技術者と所有者の考え方の違いがある。

技術者が、問題がなければ交換する必要がない、と考えるのは、それが所有者の利益と考えてのこと。

しかし所有者側としては、 
1 電気配線の断線調査を頻繁に行わない
2 問題が出る時期が、他の工事と重なると大変
3 テナント専有部等は工事ができるタイミングが限られている。

だから、早めに手をつけておきたいのだ。

▲▽▲電気幹線更新にあたり検討すべき事▲▽▲

  1. 建物全体の今後の十分な電気容量確保及び配線の設計と図面作成
  2. どこが更新済みでどこが古いかの継続的な管理
  3. 内装工事の際に、毎回確実に必要な事をしてもら得るよう指示または手配

それぞれを、誰が責任を持って行うか、これをまず決めること。

1 は、当然建物の電気設計施工に慣れた電気工事業者に依頼すべきです。
内装工事の下請けしか経験がない電気工事屋では、3相を知らない場合があるから要注意。

2と3 は、管理会社がいれば管理会社に任せられるが、管理会社の担当者でできることなら、オーナーにもできる。と言うことで、自分でもできます。

テナント専有部の配線は、テナント入居時にはできないため、空きビルでない限り分散して行う。
従って、自主管理等で自分でマネジメントをする場合は、

・管理用の図面を作成してもらう、
・各室内装工事時に必要な指示書・仕様書を作成してもらう。
(別の業者が行う場合も想定して)

を建物幹線交換の業者にお願いをしておくと、その後が楽になる。

▲▽▲所有者の最重要な仕事はマネジメント▲▽▲
ビル・マンションの所有者は、管理を自分で行うこともできるが、管理が仕事ではなく、管理をマネジメントすることが本来一番重要な役割です。
そこで、建物が古くなると欠かせない電気幹線・設備の更新、を無理なく成功させるために必要なマネジメントをご紹介しました。

分散修繕相談で、個別の相談にも応じています。こちらもご利用ください。

電気幹線・設備

さて、前置きに無しにすっきりと、築30年以上中小ビル・マンションが分散修繕を考える際の
検討対象No1 として電気幹線・設備のお話です。

▲▽▲電気のトラブルは怖い・・・・

高圧受電の場合は、電気主任技術者が付いて保安点検を受けているから大丈夫とお考えでしょうか?
低圧受電でも、たまに電気設備の定期調査がくるから大丈夫とお考えでしょうか?
高圧受電の場合、保守を受けるのはキュービクル内の変圧器まで、電気設備の定期調査で点検されるのは、分電盤等。

もちろんこうした電気設備は築30年でもトラブルリスクが高いからですが、
築50年となると、もっと全てが劣化する。

壁の後ろや天井裏の電気幹線;動力幹線及び電灯幹線、端末の照明器具、スイッチ、コンセント。

全てに漏電火災・停電リスクが高まります。

電気は予告無し(実際にはあるが普通には気がつけない)に一回のトラブルの影響が大きいため、現在生活に欠かせない「当たり前」インフラNo1の電気供給関係の全てについて、建物が40年−50年すぎると、ビル・マンション所有者は、「もれなく完全な」な更新を考えなければいけません。

▲▽▲まず電気配線の交換が当たり前
ところで余談だが、少し前にイギリス人の友人が、旦那さんの父親が亡くなり相続した家に住むことにしたと引っ越したが、引っ越しの前に電気の配線をまず全て交換したそう。

家といっても豪邸ではなく、普通のテラスドハウス(2階建がたくさん繋がっている)おそらく1920年代築だろうか。イギリス人だから、住みながらDIYで自分たちの家に作り変えていくやる気満点で、今まで住んでいた所有フラットは賃貸してDIY原資もバッチリ確保。で、電気だけは無ければ困るので、引っ越し前に配線交換の工事をしたとのこと。

この手の話はイギリス人からはしばしば耳にする。。

で今回改めてなるほど・・・と思ったのが、
相続の単位の建物の電気等のインフラ設備をリニューアルは、40年-50年前後毎。
ちょうどインフラ劣化時期で、理に適っている。

そしてもう一つ改めて感心をしたのが、
普通の人でも「まず電気配線を交換」と発想できる常識がある。ことだ。

▲▽▲建物を長く持つ文化の本領
日本では、欧州の石造建築文化vs日本の木造建築文化、として文字通り石と木の建築技術の問題と考えられがちだが、実際はそうではない。違いは、「古い建物に何をすれば良いか」が普通に「分かっている」か「分かっていない」かの違いでしかない。

欧州でも石造建築は、城か貴族の開発した街ぐらい。一般人は木造やレンガ、20世紀以降の鉄筋コンクリートの質も??も少なくなく、傾いた建物も珍しくない。

建物躯体が何「造」であろうと、建て替えという発想がないから、「建物設備を延命更新し、時代に合わせて使い勝手を向上させて使い続ける」感覚が、一般市民レベルで身に付いていて、「古い建物に何をすれば良いか」感覚的に「分かっている。」

建物躯体が何「造」であろうと、電気幹線や設備、給排水管・設備、(加えて欧州なら給湯とセントラルヒーティング)屋上防水等建物設備の寿命性能は同じ。各時代で要求される水準も同じだ。
ここに手を入れなければ建物は使えない。

▲▽▲古い建物をお金をかけ過ぎずに持てなければ
日本人も最近は古い建物のリフォーム、リノベーションが言われようになったが、まだまだ甘い。(まだまだ建設業界のカモすぎる)
日本人がふんわり考えるリフォーム程度は、先の例のイギリス人は何年も何年もかけて自分でDIYする。資金確保はあくまでも材料代。外に依頼するのは、自分ではできない建物設備工事がほとんど。

「古い建物に何をすれば良いか」が分かっているとは、言い換えれば、
最低限どこにお金をかければ、建物を活かせるか、が分かっている。
古い建物をお金をかけ過ぎずに持てるから、古い建物が負債にならず、それどころか
自分で手を入れて自分で自分の空間を作る自己実現の対象になる。

日本人も、
「最低限どこにお金をかければ、建物を活かせるか」をもっと考えた方が良いでしょう。

と、脱線が長引いたのでもう少し具体的なお話は次回へ続きます。。。。